在宅医療と救急医療は、もっとも遠いようにところにあると思われる方も多いかもしれませんが、実はとても近い関係にあります。
救急医療は119番通報で救急隊員、救急救命士が現場に赴き、応急処置や救命救急処置等の救護(病院前救護)を行い、救急病院へ搬送することは一般的に知られていますが、これに加え、ドクターカー、ドクターヘリコプターにより医師・看護師が現場に赴き、その現場から救急医療が行われています。これは病院前医療といわれテレビドラマでご覧になった方も多いと思います。
訪問在宅診療や訪問看護も医師や看護師がご自宅に伺って医療を行いますので、まずは、病院の前あるいは医療機関以外に行なわれる医療(病院前医療)という意味で両者は似ています。
このような形態だけでなく、内容についても共通点があります。以下に整理してみます。
- 病院では循環器科・消化器科等の病気や臓器によって専門の医師が対応しますが、在宅医療・救急医療ともに臓器に関わらず全身を診て総合的に判断することが求められます。
- 救急医療は内科、外科問わず広く急病に対応することは知られていますが、在宅医療では、内科的な知識や考え方はもちろんですが、骨折の初期対応、床ずれの処置、胃ろう・カテーテルなどの処置・管理などの外科的な技術も求められます。
- 病気やけがは身体にかかる侵襲(ダメージ)とそれに対する生体反応とのバランスでいろいろな症状が出ます。高齢患者では加齢というダメージが長い時間をかけて、救急患者では短い時間で身体にかかった結果、いろいろなことが起こります。つまり、背景にある学術的要素はとても似ています。
- 両者とも病気だけでなく、生活や心のサポート、本人にはもとより家族への援助も重要な役割です。
- 両者とも終末期医療や看取りを経験することが多く、見通しの良くない病状経過を伝えることが多いのが特徴です。そのため、これらに関わる医療関係者はこれらの問題について日頃から高い関心を持って考えています。
- どちらも医療者だけで行う医療ではありません。関連職種や社会との接点が多いため、周囲とのコミュニケーションを重視し、患者様やご家族の方を中心にチーム全体で医療を進めて行きます。